各ペースが実際に要求するもの
1日の語数を決めることは、実は復習量を決めることです。1語におよそ9回の接触が要るとして、1日にN語を追加すれば、待ち行列が埋まった時点から毎日およそN×9回の想起を行い続けることになります(新規追加を続けるかぎり)。人が挫折するのは、この定常状態であって新規語数ではありません。
表では1語あたり9回(8〜12回の中央値)、1枚6秒で計算しています。答えがわかる、あるいは「わからない」とわかる認識カードなら、おおむねその程度です。
| 1日の新出語 | 3,000語族まで | 定常状態の復習回数/日 | 所要時間/日 |
|---|---|---|---|
| 3 | 約2年9か月 | 約27回 | 約3分 |
| 5 | 約1年8か月 | 約45回 | 約4〜5分 |
| 10 | 約10か月 | 約90回 | 約9分 |
| 15 | 約7か月 | 約135回 | 約14分 |
| 30 | 約3か月半 | 約270回 | 約27分 |
目標までの期間は各語が一度で定着する前提です。実際には待ち行列を戻る語のぶん、20〜30 %多く見積もってください。復習の列は最初の数週間を過ぎたあとの定常値であり、初日の値ではありません。速いペースが最初だけ楽に感じる理由はここにあります。
上限が復習であって新出語でない理由
午前中に新しい単語50語と出会うことはできます。できないのは、その50語がこの先数週間で生む450回の想起をこなすことです。語彙のペースが崩れるのは常に二つ目の数字であり、しかも一つ目が成功に見えるくらい遅れて崩れます。
- 出会うのは安く、保つのは高い。 1語を一度読むのは数秒ですが、8回目・12回目まで運ぶ工程がほぼすべての時間を食います。1日の目標が数え忘れるのは、まさにその部分です。
- 負荷は遅れてやってくる。 今日の10語は今後数週間に復習を割り振ります。1週目は軽く、ペースが本当に試されるのは4週目です。
- 1日飛ばすのは無料ではない。 復習は消えずに積み上がり、待っているあいだも忘却は進みます。飛ばした1日は、飛ばした復習の回数より高くつきます。
8〜12という数字の出どころと、想起が回数をどう変えるか:単語を覚えるには何回見る必要があるか(英語)。
1日10語で各目標にかかる期間
語彙目標は語族で数えるのが通例で、意味のある目標は語彙カバー率——ふだんの話し言葉や文章に出てくる語のうち、すでに知っている割合——と結びついています。Nation(2006)は最初の1,000語族を日常会話の約80 %に置き、以降は1,000語ごとに得られる分が減っていきます。
| 目標(語族) | できるようになること | 1日10語なら |
|---|---|---|
| 500 | 標識・メニュー・最低限の言い回し | 約2か月 |
| 1,000 | 日常会話の約80 %をカバー | 約3か月 |
| 2,000〜3,000 | 約95 %をカバー——会話が成立する | 約7〜10か月 |
| 5,000 | ニュース番組の大半を止まらずに | 約1年5か月 |
| 6,000〜7,000 | 話し言葉の約98 %——楽に聞ける | 約1年8か月〜2年 |
| 8,000〜9,000 | 辞書なしで小説や新聞 | 約2年3〜6か月 |
カバー率はNation(2006)およびAdolphs & Schmitt(2003)による。各段階が実際に何を意味するか、CEFR対応つき:言語を話すのに必要な語彙数。
1日の数字を増やせば速くなる?
復習が実際に行われている範囲までは、そのとおりです。Cepedaら(2006)は分散学習に関する254件の研究を統合し、同じ総学習時間でも詰め込むより分散させたほうが保持が明確に良いことを示しました。つまり大きな1日のブロックは、小さなブロックを掛け算したものではありません。取り込みを倍にすれば復習の負債も倍になり、その負債は「無いかもしれない日」で支払うことになります。
締め切りを決めるのは忘却です。1885年のエビングハウスの曲線——MurreとDros(2015)が現代的な統制のもとで再現——は、最初の24時間に最も急な低下があることを示します。月曜に見て次が日曜という語は、多くの学習者にとって「一度見ただけの語」です。1日の数字が数えるのは、記憶痕跡が薄れる前に届いた接触だけです。
長期で見ると詰め込みの分はさらに悪くなります。BahrickとPhelps(1987)はスペイン語の語彙を学習から8年後に検査し、保持を左右していたのは各セッションの強度ではなく、当初のセッションがどれだけ間隔をあけていたかだったと報告しています。勝つのは野心的なペースではなく、3か月目にもまだ回っているペースです。
同じ90回、4通りの1日
1日10語と、そこから生じる90回あまりの想起を前提にします。それを1日のどこに配るかで、残る量も、そもそも実行できるかどうかも変わります。
以下のどれも合計は変えません。4行はまったく同じ作業量です。
| 1日の形 | 研究が予測すること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 9分のブロック1回 | セッション内に集中しており、4つの中で長期保持は最も弱い(Cepeda et al., 2006) | 毎日守り抜く9分の確保 |
| 4〜5分のブロック2回 | 1回より明確に良い——効いているのは間隔 | 忙しい日でも生き残る2つの枠 |
| 1日に散らばる短い接触 | 1回あたりの間隔が最大で、しかも再読ではなく想起(Roediger & Karpicke, 2006) | 自動的に発火するきっかけ |
| スキップ——忙しい日の既定値 | 接触ゼロ。待ち行列は翌日に繰り越され、忘却だけが進む | 何も要らない。それがまさに問題 |
結果の大半を決めるのは4行目です。「思い出したら勉強する」計画は1日のあらゆる予定と競合しますが、すでにやっている行動に紐づいた計画は競合しません。
机に向かわない人の接触はどこから来るか
3行目に必要なのは、判断を挟まず1日に何十回も自動で発火するきっかけです。たいていの人はすでにポケットに持っています。
きっかけはすでに発火している
スマホを確認する回数は1日およそ186回、起きている1時間あたり約11.6回です(Reviews.org, 2026)。1日の語彙ペースに必要なのは新しい時間枠ではなく、すでに繰り返されている枠に接続することです。
手を伸ばす動作を想起に変える
LearnScreenはAppleのスクリーンタイムAPIで、選んだアプリをシールドします。開くとフィードの代わりに単語カードが出て、答えると設定した時間だけアプリが解除されます。この接触は記憶からの検索——つまり効くほうの種類です(Roediger & Karpicke, 2006)。
間隔は待ち行列に任せる
ライトナー式が出題を選びます。直前に間違えた語はすぐ戻り、正解した語は幾何級数的に遠ざかる。何を復習するか自分で選ばないので、8〜12回の接触は一度に固まらず分散して届きます。
- 1日の負荷は自分で決められます。 1セッションの語数は3〜20語、シールドが1日に戻る回数も調整できます。初期設定(5語×5セッション)は1日およそ25回の想起で、新出語ペースにすると約3語ぶん。どちらも上げれば表の「1日10語」の行に近づきます。
- 18テーマに1,080語以上を収録。 学習対象として11言語が選べ、訳・発音表記・例文つきの自作単語も無制限に追加できます。
- オフラインで動作。 インストール後はネットワークなしでカードもシールドも動きます。iCloudバックアップは機会があるときに行われ、書き込み先は当社サーバーではなくご自身のプライベートデータベースです。
- アカウントも連続記録もなし。 登録は不要で、軽い日を罰する連続日数もありません。待ち行列がその語を、次にシールドされたアプリを開く瞬間へ運ぶだけです。
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- 受動的な学習 — 学習時間を確保せずに語彙を積む方法(英語)。
- Ankiの代替 — 向こうからやってくる分散復習(英語)。
よくある質問
出典
- Nation, I. S. P., & Wang, K. (1999). Graded readers and vocabulary. Reading in a Foreign Language, 12(2), 355–380.
- Pigada, M., & Schmitt, N. (2006). Vocabulary acquisition from extensive reading: A case study. Reading in a Foreign Language, 18(1), 1–28.
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354–380.
- Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249–255.
- Bahrick, H. P., & Phelps, E. (1987). Retention of Spanish vocabulary over 8 years. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 13(2), 344–349.
- Murre, J. M. J., & Dros, J. (2015). Replication and analysis of Ebbinghaus’ forgetting curve. PLOS ONE, 10(7), e0120644.
- Nation, I. S. P. (2006). How large a vocabulary is needed for reading and listening? Canadian Modern Language Review, 63(1), 59–82.
- Adolphs, S., & Schmitt, N. (2003). Lexical coverage of spoken discourse. Applied Linguistics, 24(4), 425–438.
- Reviews.org (2026). Cell Phone Usage Stats. Survey of ~1,000 US adults, fielded Q4 2025. Report
接触回数、カバー率、CEFRの帯は上記の公刊研究に基づきます。表の計算は当方によるもので、1語あたり9回、1枚6秒、取りこぼしの余裕は見込んでいません。最終確認:2026年7月29日。

